おっぱいサバイバー

2015年28歳で乳がん告知。闘病の記録と感情をつづるブログ。

北斗晶さんの乳がんに思うこと

筆者が抗がん剤治療や手術を行ったのは2015年のため、治療に関する情報は最新と異なる可能性があります。なお、筆者の近況はTwitterで発信しています。

シルバーウィークが明けまして(まだまだ連休続行中という方も多そうですが)、久しぶりの更新です!こんにちは。
世間は浮かれ気分で最大9連休を過ごしている中、わたしは副作用でぐったりしていました。とはいえ、症状は数日で落ち着くので、今はすっかり元気です。

そんな中の気になるニュースと言えば、昨日、北斗晶さんがご自身のブログで乳がんをカミングアウトされました。
ぼんやりインターネットを眺めていたら、突然の告白に衝撃を受けました。わたしなりの激励の言葉(ブコメ)を添えて2ブクマ目をゲットしたところ、たくさんのスターをいただいてしまい大変恐縮です… ありがとうございます。これを糧に、わたしも頑張ります。

北斗晶『【またね】と言わせて下さい。』

北斗晶さん乳がん。どうか予後が良好なものでありますように。そして同じ乳がんを患う同志として長い戦いを一緒に頑張りたいです!

2015/09/23 15:38

さて、ブコメや、該当記事をトピックスにしているYahoo!ニュースのコメント欄などでは、多くの励ましのメッセージが見られました。ただ、いくつか乳がんに対する小さな誤解もあるように思ったので、わたしなりに、ぜひこれは知っておいて欲しい!ということをまとめてみます。

時期同じくして戦う、一人の乳がん患者の意見と思っていただければ幸いです。

乳がん検診は、乳がんを予防するものではなく、早期発見するためのものである

乳がん検診は、世界的なピンクリボン活動、国内では厚生労働省や自治体の推進があり、ここ十数年で認知度が向上しました。わたしも、10代でピンクリボン活動を知ったからこそ、検診を受けられた一人です。

検診の最大の目的は「早期発見」することです。そして、早期発見の最大のメリットは「乳がんで死ななくてすむ」という確率が高いことです*1

北斗さんは毎年検診を受けられていたのにも関わらず、乳房全摘出なのは残念ですが、他の部位にできていた場合、発見が遅れ手が施せない可能性もあったことを考えると、前向きに捉えられるのかなと思います。ご本人も、5年先10年先の命のためと書いておられますし、このタイミングで命を落とさずに済んだことが、何よりのメリットだと思います。

乳房全摘出から部分摘出(温存)へ変更できる可能性もある

一般的に、腫瘍が3cmを超える場合、全摘出となることが多いようです。
しかし、3cmを超えていても、術前化学療法(=摘出手術前に抗がん剤治療をすること)を行い縮小できた場合、部分摘出に変更できる可能性もあります。わたしは、この方法を選択して、全摘から温存を選択できるまでになりました。
ただ、治療方法については、がんのタイプやステージ、患者の年齢・体調・体力などを考慮して決定するため、必ず希望の選択ができるとは限りません。また、温存できたとしても、審美性の観点(温存して傷口を残すより再建した方が綺麗にできることもある)、心理的観点(残しておくのは不安)、再発防止の観点(遺伝性乳がんの場合、全摘の方が再発リスクが低い)から全摘する患者さんもいるようです。

乳がん患者の8割は遺伝性ではない

アンジェリーナ・ジョリーさんの乳房全摘出でも話題になった遺伝性乳がん。北斗さんは、ブログで近親者に乳がん経験者がいないのに、罹患されたことを悲しんでおられました(ちなみに、わたしもいません)。
実際、家族に乳がんの経験者がいる場合、リスクは跳ね上がります。一方、全乳がん患者のうち、遺伝性のものは5〜10%程度といわれています*2。データにはバラつきがあり、26%程度という見方もあります*3 が、いずれにせよ過半数を占めるものではありません。
自分は近親者にいないから大丈夫!ということはないので、ぜひ安心せずに、検診を受けてみると良いと思います。

乳がんはほぼ治る(治癒率が非常に高い)

10日ほど前、国立がん研究センターによる、がん患者の5年相対生存率が出ました。
これによれば、乳がんは92%と非常に高い値となっています。

がん診療連携拠点病院の院内がん登録による5年相対生存率初集計 << 国立がん研究センター

“主要部位における全病期の5年相対生存率 胃71.2%、大腸72.1%、肝臓35.9%、肺39.4%、女性乳房92.2%でした”

2015/09/14 18:25

ただし、この結果で気をつけなくてはいけないことが2点あります。
1点目は、全病期(ステージ)の合計であること。当然、早期であればあるほど値は良いものとなり、進行期であれば値は下がります。
2点目は、2007年〜2012年の5年間の数値であること(2007年に乳がんと診断された人の5年後を示したものであるということ)。最新のデータであるように見えますが、乳がんの中でも予後が悪く再発リスクが高いとされたタイプ(HER2陽性乳がん)のため治療薬は、2008年に認可されました。つまり、最新の治療方法では、さらに良い値が出るだろうと言われています。

乳がんの本当のこわさ

治癒率の高い乳がんですが、最もこわいのは、再発するリスクが他のがんより高いことです。
上記の5年相対生存率ですが、5年を区切りにしていのは、一般的ながんでは5年を治癒の目安とすることが多いためです。乳がんの場合、治療期間が10年に及ぶこともあり、非常に長い戦いです。治療を終えた、10年、20年後に再発することも少なくありません。
なので、根治を目指す治療の場合は、同時に再発防止の治療も行います。摘出手術だけでなく、化学療法・ホルモン療法・放射線療法などを組み合わせることが多いのはこのためです。


最後に、今まさに頑張っておられる北斗さんの予後が良く、治療が少しでも楽であることを祈って、わたしなりの激励としたいと思います。
(同じ時期に北斗さんが闘病されるのは、なぜかとても心強いので、わたしもがんばるぞ!)