おっぱいサバイバー

2015年28歳で乳がん告知。闘病の記録と感情をつづるブログ。

がん患者はかわいそうなのか?

筆者が抗がん剤治療や手術を行ったのは2015年のため、治療に関する情報は最新と異なる可能性があります。なお、筆者の近況はTwitterで発信しています。

がんは、2人に1人が生涯に1度は罹ると言われており、非常にポピュラーな病気です。でももし、患者に出会ったとき、特に若い患者に対しては、どんな言葉をかければ良いのか悩むと思います。

というのも、こんな記事を読みました。励ますつもりが、逆に患者を傷つけかねない言葉だそうです。

「頑張って」
…十分に頑張っていて、これ以上頑張りようがない
「若いのにかわいそう」
…不幸だとすり込まれているようで、前向きな気持ちがそがれる
「偉いね」
…上から目線で評価されていると感じる
「◯◯してあげる」
…がんになったことですでに負い目を感じている

http://mainichi.jp/shimen/news/20151023ddm013040016000c

わたしが乳がんを公表したとき、さまざまな反応がありました。上記のような言葉も含まれていたし、それ以外もたくさんありました。でも、今のところ、不愉快な気分になったことは一度もありません。

とにかく思ったのは「みんな優しい」ということです。どんな言葉だったとしても、悪意をもって声をかける人なんて絶対にいません。
そして「こちらの伝え方が、その通りに返ってくる (例えば、絶対に治ると思って伝えれば相手もそう思ってくれるし、不安そうに伝えれば相手も不安になる)」「自分の芯を持っていればこわいものはない(自分の治療方針やポリシーが決まっていれば、それらにわざわざ口を出してくる人はほとんどいない)」ということも学びました。

患者としてのわたしは、主に5つ、気をつけるようにしています。まあ、肉体的にも精神的にも万全の状態でないし、出来ないタイミングもたくさんあるので、あくまで心がける程度です。

  • まわりの人たち全員にとにかく甘えること。
    • ただし “甘えること” と “わがままになること” は違う。
    • 欲しいもの・ことがある場合は、具体的に伝える。
      • 病状・病気について一番詳しいのは自分。家族や友だちに、何かを察してもらうのは難しい。
    • もし申し訳ないと思うなら、大事な誰かががんになったとき、自分が助ける番になることを想像する。
  • 自分をかわいそうだと思っても構わないし、自分が世界一頑張っていると思い込んでよい。
    • もっとつらい人もいるだろうし、もっとラクな人もいるかもしれない。でも今の自分を無条件で認めてあげられるのは自分しかいないし、自分を好きになるのがポジティブへの第一歩だと思います。
      • まあ、わたしはもともと自分大好きだっただけですが…
  • がん患者としか感情を共有できないと思い込まない。
    • まわりの人はみんな助けてあげたい・何かしてあげたいと思ってくれています。つらかったと言えば励ましてくれるし、治療が成功したら一緒に喜んでくれるはず。
  • 元気になったら(治療中の調子の良いときも含む)自分を励ましたときと同じくらい、他人にも優しく接する。
    • してもらったことを返していけば、負い目も少なくなります。
  • 苦手な人がいたら接触をやめる。その言い訳に病気をつかっても良い。
    • 人間なので苦手な人はいるし、弱っているところにつけ込んで接触してくる人もいるかもしれません。病気を言い訳にストレスを減らすことを第一に考えると逃げやすいです。自分で過ごしやすい世界をつくる。

で、こんな感じで生活していると、冒頭のセリフにも素直に応えやすくなります。

  • 「頑張って」
    • 素直に「ありがとう」と返せばそれで良いし、どうしても嫌なら「毎日頑張ってます!」と言えば良い。
  • 「若いのにかわいそう」
    • 「そうなんですよね、自分でもショックで…」と言えば感情の共有になります。
  • 「偉いね」
    • これも素直に「ありがとうございます」で大丈夫。本当に偉いんです。
  • 「◯◯してあげる」
    • 「じゃあ◯◯お願いします」や「何かあったら頼りにしますね」とておけば、後から助けてもらえるかもしれません。

がん患者だからと言って、負い目に感じることはないけど、弱っているときは素直に助けてもらえば良いと思っています。元気になったら、他の弱っている人を助けていけば良いんです。

一方、患者に出会った方は、以下を肝に銘じて接してもらえれば、よりお互いが歩み寄りやすくなると思います。

  • いつか自分も罹患する可能性があるということ。
    • どんな生活をしていても、可能性がゼロになることはありません。
  • 患者は動揺していて今までと感情表現が変わることもある。
    • 気遣いのできていた人ができなくなったり、感情的になることもあります。
  • いつか絶対に元気になると信じること。
    • どんな病状でも悲観しすぎてよいことはないですし、延命治療だったとしても一日でも長く過ごせることを信じてほしいです。
  • 身体的な変化(脱毛・激痩せ)については、患者自身から触れてこない限りは触れない方が無難だと思います。

がん患者に限ったことではないけれど、お互いが理解し合えるように歩み寄っていくのが大事だと思っています。わたしが乳がんになって感じたことは「人はみんな、思っていたよりもずっと優しい」ということです。

がんは、どんなに生活に気をつけていても、誰もが罹る可能性がある病気です。だから、不運かもしれないし、かわいそうかもしれないけど、負い目に感じることなんてない。そして、自分は不運でかわいそうだという思いも、月日が経てば「このタイミングで良かった」と思える日が来ます(わたしはそうでした)。

がん患者にとって、住みやすい世界ができますように。

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