おっぱいサバイバー

2015年28歳で乳がん告知。闘病の記録と感情をつづるブログ。

産まない選択(がん治療と卵子凍結についての話)

特別お題「『選択』と『年齢』」

いままでの人生をふりかえると、いくつもの選択をしてきました。一番初めにあった大きな選択は、中学3年生のとき、進学先を決めたことと、それにともなう入寮でした。その後も、進学、就職、引越し。誰かと付き合うこと、別れること。結婚すること。大きな買い物。...と、それぞれ家族や友だちの反対もあったけれど、すべて自分の意思で決めてきました。若くて健康だったわたしは、諸々のしがらみや、年齢はあまり気にせず「自分がやりたいか?」だけで選んでいたと思います。

乳がんになり、治療方針を決めるとき、医師から、ある選択を迫られました。

「子どもを産む可能性を、できるだけ高く残したいですか?」

妊孕性(にんようせい)といわれる「妊娠のしやすさ」は、基本的には年齢によって決まり、高齢になればその可能性は下がる、ということはよく知られています。

抗がん剤治療をすると、妊孕性が下がるといわれます。実際、わたしも抗がん剤投与直後から生理は来ませんでした。また、ホルモン治療では、女性ホルモンを抑える(生理を止める)ため、その期間は妊娠できなくなります。治療を終えると元に戻るといわれていますが、実際にどうなるかは個人差があるそうです(治療後も生殖機能が残って、出産されている人もいます)。さらにホルモン治療は5年〜10年と長期間に及ぶことが多く、わたしの場合は10年間行う予定のため、治療終了時に39歳。もしも妊娠を望むのであれば、その可能性をできるだけ高く残しておかなくてはいけません。

具体的には、治療前に、卵子を凍結するかどうかの選択をしなくてはいけませんでした(わたしが病院で受けた説明では、既婚者の場合、卵子だけではなく受精卵の状態で保存したほうが良いとのことでした)。そして、その答えは1週間で出す必要がありました。

わたしが出した結論は「凍結しない」でした。それは、将来的に「妊娠を望まない」ことと、ほとんど同じ意味だと覚悟しました。

卵子の凍結は、わたしが治療を開始した時点では保険適用外。いまは、自治体によっては補助金を出している場所もあります*1が、数十万規模のお金が必要になります。注射や卵子採取など、治療もラクなものではありません。

告知を受けたばかりのわたしは「早く治療をしたい」が一番の願いでした。そして、すでに結婚をして3年ほど経った状態で、「どうしても自分の子どもを産みたいわけではない」と何となく思っていました。正直にいえば、「がん治療を理由に子どもを産まなくて良い」という事実に、少しホッとしました。いま考えてみれば、がんにでもならないと、堂々とそういう選択ができないのはおかしな話ですけれど。

夫は、病院で一緒に妊孕性についての話を聞いており、わたしの「卵子凍結はしない」という結論に、すぐに了承してくれました。いつも「(僕のことより)したいようにするのが一番良い」と言ってくれる人です。夫には子どもがいるので、わたし自身が本当にどうしたいか?というのを考えやすかったと思います。もし、夫婦ともに子どものいない状況だったら、違った結論を出していたかもしれません。

それから2年経過した現在、選択に後悔はありません。誰かと比べずに、好き勝手に生きる人生はかなり楽しい。

がん治療は選択の連続で、その選択か正しいかは、自分が幸せかどうかでしか決められないのだと思います。病気になってしまったことに選択の余地はなかったけれど、それからの選択は自分でできる。だから、卵子凍結しなかったことも、抗がん剤治療をしたことも、温存手術を選んだことも、いま幸せなので良かったのかなと思います。

年齢や、病気や、そのほか様々な理由で、急いで決めなくてはいけない選択が出てくるのが人生です。選択の最中は、不安で押しつぶされそうになることもあるけれど、どうせいつか死ぬならば自分が幸せだと思える選択をしていきたい。

30歳を超えても、病気になっても、意外と幸せです。

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それでもわたしは生きていく

小林麻央さんの訃報。あらゆる感情が押し寄せて、うまくことばにできません。

もちろん悔しさはあるけれど、どこかで、やっとつらい闘病が終わったのだという安堵の気持ちがあります。どうか安らかに休まれることをお祈りしています。

正直にいえば、いつか遠くない未来にこうなることは、わたしを始め、きっと多くの乳がん患者がわかっていたと思います。それでも気丈にブログを更新し生きていく麻央さんと、いつも通りに仕事を続ける海老蔵さんに、がん患者の生き方と夫婦の愛の形を学びました。

わたしは、自分の乳がん告知後しばらくは、芸能人のがんと向き合うことができませんでした。感情移入をしすぎて、他人事とは思えなかったからです。いまは、ほとんど元の生活に戻り、がん患者も一人一人全員違い、「わたしはわたしで生きていく」という気持ちが強くなりました。だから、もしも、この報道に向き合えない、乳がん患者やご家族の方がいても、それはいつか時間が解決するのだと伝えたいです。

乳がんにも、さまざまなステージや病状があります。麻央さんは、ステージ4であることを公言していたし、そのように報道されていました。一昔前のように、がんをひとくくりにして、すべてが死に向かっていくというイメージは、減ったのではないかと思います。

麻央さんのブログは、多くの人に読まれ、健康な人から見れば、つらいことが多かったかもしれないけれど、終末期医療のリアルな様子を伝えるものになりました。一方わたしは、同じ若年性の乳がんでもステージも違い、いまはふつうの暮らしを送っています。

闘病を綴ることは、自分自身の励みになると同時に、のちに同じような状況になる誰かのために、絶対に役に立つと思っています。麻央さんのブログを見るのがこわい患者もいただろうし、励みにしていた人もたくさんいたと思います。

ところで、今日は偶然にも、若年性の乳がん患者のオフ会に行く予定が入っています。訃報を受けて、LINEでは「それでも今日はいつも通り楽しみましょう」という会話をしました。同じ病気同士の付き合いは、ときに困難もあります。でも、残ったものは、どんなことがあっても生き続けないといけない。わたしは、いつも通り生き続けることが、誰かの悔しさを晴らすことになると思っています。

これからも強く、生きていくしかないのです。

Wの悲喜劇の感想

先日の予告通り*1Wの悲喜劇 〜日本一過激なオンナのニュース〜に出演しました! 6月28日まで無料視聴できますので、見ていない方はぜひご覧ください。

知り合いや友人たちに「見たよ〜」「思ったより映ってた!」など感想をいただき、とても嬉しいです。というわけで、視聴した方はコメントをいただけますと喜びます。わたしの感想としては、緊張していた割には、きちんと話せていて安心しました。編集の力はすごい。

番組も、病気についてあまり知らない方も理解できるよう、易しくわかりやすい構成になっていたと思います。乳がん、子宮頸がん、卵巣腫瘍はそれぞれ全く病状や治療は違いますが、女性ならば知って損はない内容にまとめられていました(詳細は番組をご覧ください)。

また、よくありがちな闘病をつらく扱うようなこともなく、わたしを含め、病気になっても元気に生活している20代30代の女性のようすが伝えられたと思います。がんになっても元気に生きている人はたくさんいます。いま戦っている方の勇気になっていれば嬉しいです。

さらに嬉しかったのは、なんと、麻美ゆまさんにリプライをもらったこと!*2 そして、一緒に出演した漫画家の藤河るりさんに似顔絵を描いていただいたことです。全員似ているしかわいい。プロはすごい。

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