2015年5月2日、当時28歳で乳がんの告知を受けました。
「どうして自分なんだろう」という絶望的な気持ちと、精密検査の結果が出たときの安堵、そして「やっぱりか」という諦めにも似た感情が入り混じる中で、10年後の自分の姿などまったく想像もできませんでした。生きていられるのかという命の不安。もし生き延びられたとしても、元通りの生活が待っているのか、それともまったく違う日々が続くのか。治療を前にしたわたしには、その先の未来がまったく描けませんでした。他のがんに比べて比較的予後が良いと知ってからも、同世代の患者やサバイバーの情報は少なく、心細さを感じていました。
でも今日、実際にその10年後に立っています。
「あっという間だった」とは、正直思いません。化学療法は10年経ったいま思い出しても辛かったし、ホルモン療法はまだ続いている。年数を重ねた今でも、身体が痛むと「再発では」と不安になるし、自分よりも軽いステージだった人や、年齢を重ねてから治療を受けた人を、羨ましく感じることもあります。この10年の間に、同級生たちは結婚し、子どもを産み、キャリアを重ねました。そして、同じ時期に治療をしていた仲間のなかには、今日という日を迎えられなかった人もいます。
わたしは、自分の経験が誰か一人の助けになればと、このブログ「おっぱいサバイバー」を始めました。そして、がんに関する仕事をしたいと考え、ZINEでCancerWithに関わるようになりました。さらに、若い世代を支援したいという想いから、AYAweekの活動にも参加するようになりました。
CancerWithは、この節目を機に卒業しましたが、「活動を見て励みになります」と言っていただけること自体が、わたしにとっての大きな励みでもありました。
cancerwith.com
「自分の経験を活かして素晴らしい」と褒めていただくこともありましたが、わたしにとってそれらの活動は、10年前の自分自身を救うためのものだったし、「がんになったことを無駄にしたくない」という強い気持ちからのものでした。
この10年は、ずっと自分の病気と向き合い、不安をどうにか正当化しようと踏ん張ってきた時間でした。一時期は、「病気になったことに意味がある」と思いたくて、がんを価値に変えようと懸命に努力してきました。10年間一度たりとも弱音を吐かなかった自分を、今日ばかりは褒め称えようと思います。よくがんばりました。
10年、自分と向き合う中で気づいたことがあります。病気であろうとなかろうと、わたしにはちゃんと価値があるし、わたしは今も、ちゃんと成長しているということ。10年前は若すぎて気づけなかったことに、ようやく気づくことができました。続けているということ。10年前はあまりに若くて気づけなかったことに、経験と年齢を重ねてやっと気づきました。
治療はまだ少し続きますし、仮に終わったとしても、再発への不安はこれからも残ります。でも、ひと区切りとして、このブログ「おっぱいサバイバー」の更新は、これで終わりにします。更新中、多くの方に閲覧やコメントをいただき、治療中の励みになりました。この場所があったから、前向きに乗り越え、今のわたしがあります。本当にありがとうございました。
今後はSNSや別のサイトにいるので気になる方はそちらで! これからも、粛々と、生きていきます。
写真は、10年前告知直後に行った厳島神社に再訪した写真。闘病中のお守りを御礼とともにお返ししました。