おっぱいサバイバー

2015年28歳で乳がん告知。闘病の記録と感情をつづるブログ。

麻美ゆま Re Start を読んで

筆者が抗がん剤治療や手術を行ったのは2015年のため、治療に関する情報は最新と異なる可能性があります。なお、筆者の近況はTwitterで発信しています。

麻美ゆまさんという、元AV女優がいます。
1987年生まれで、わたしのひとつ歳下です。

26歳で、卵巣に境界悪性腫瘍(良性と悪性の間といわれる腫瘍)が見つかり、卵巣・子宮の全摘出を受け、抗がん剤治療を受けていました。現在は治療は落ち着き、AVは引退されたそうですが、タレント活動を再開されています。
わたしは、もともとファンだったので、インターネットのニュースや、本人の Twitter で、経過を見守っていました。

そのときのツイート。

歳が近いこともあり、病気を告白されたときは、とても驚きました。同性のわたしから見ても、いつも笑顔が可愛くて、スタイルも良く、憧れる部分がありました。
当時のわたしは、まさか自分が乳がんになるとは思ってもおらず、「こんな若くてきれいな女性が抗がん剤治療や手術を受けるなんて…」と、ただただショックを受けたのを覚えています。

そんな麻美ゆまさんの自叙伝があると知り、やっと読みました。

ほしいものリストから送っていただいていたのですが、なかなか他人の病気と向き合えず、ずっと読めずにいました)

※ここからネタバレを含みます。


本は大きく分けて4部構成になっています。

第1章は「がんという恐怖」という名の通り、病気が発覚し治療(手術)を受けるまでの説明と、麻美さんや家族の思いが書かれています。
「いつも元気な麻美ゆま」をイメージしていると、一番つらい部分かもしれません。

カメラを向けられ、いつものように笑おうとしても、勝手に涙が流れそうになってしまうのです。(P. 19)

そんな話を突然突きつけられた母は、子供のように声をあげて泣きじゃくりました。そんな母の姿を見て、わたしも姉も自然に涙が溢れ出てきました。(P.28)

一方、同じがん患者(正確には、麻美ゆまさんががんではないのですが)としては、素直に感情を表していて「わたしにも、こんなときがあったなあ」と共感します。わたしは、麻美さんに比べれば、感情を表に出さずに闘病していたので、もっとたくさん泣いておけば良かったとも思いました。

第2章〜第7章は、麻美さんの半生を綴っています。幼少期や子ども時代のこと、家族のこと、AV女優や仕事のこと。
闘病記ではなく自叙伝なので、ファンでないと冗長と感じる部分かもしれません。
AV女優として第一線で活躍する(特に女性だと馴染みがない方も多いかもしれませんが、麻美ゆまさんはとても有名なAV女優でした)裏で、家族を亡くし、自分は大病を患うという人生は、あまりにも過酷で波乱万丈です。
乳がん告知後「わたしって不幸かも」と何度か思いましたが、みんなそれぞれ色んな人生があるんだなあ、と(あまりにも当然のことを)思い知ります。

第8章、9章は、病気の説明と抗がん剤治療について。
卵巣がんと乳がんでは使う抗がん剤薬は違いますが、副作用は似ている部分もあります。倦怠感や吐き気、脱毛、白血球の減少(による感染症の恐れ)など。
わたしは、抗がん剤治療から3ヶ月が経ち、早く忘れたい一方で、誰かと共有したいと思うことも増えました。あのときはつらかったよね、がんばったよね、みたいな。

なかなか同世代で抗がん剤のつらさを語り合うことはできませんが、本を読むと共感して、みんな頑張ってるんだなあとホッとします。
ただ、今まさに抗がん剤治療を受けているときは、絶対に読めない内容だとも思います。今治療中の方は、落ち着いたころに、読んでみるのをおすすめします。

最終章には、今後に向けた前向きな気持ちが綴られています。

抗がん剤治療中は一日がとても長く感じていたけれど、いまはこの1年があっという間だったと感じます。ベッドの上で毎日、ただただ一日が早く過ぎ去ってほしいと願っていたことも、まるで遠い昔のことのようです。時折、辛かった時のことを思い出すこともありますが、それも徐々に少なくなってきました。(P. 243)

わたしも、つらかった抗がん剤治療を、すっかり過去のことように思う機会が増えました。みんなこうやって乗り越えていくんだと思います。

なにより、同世代や歳下の人が元気に過ごしていると励みになります。
わたしも頑張ろうと思います。

抗がん剤治療やがん治療を終えて、これから社会復帰を目指すような若い女性にはおすすめの一冊です。

最後に、麻美ゆまさんが治療を終えてすぐに公開した YouTube 動画で締めくくります。
公開当時も泣けたけど、自分も似た闘病をした今は、より泣けます。